主観的評価で必要な情報は以下になります。
- 診断・投薬
- 主訴
- 症状の傾向
- 現病歴・治療歴
- 活動・参加
- 心理社会的要因
- 仕事・生活習慣
- 健康状態・既往歴
- ゴール・期待
症状の傾向では、「増悪因子」「寛解因子」「24時間の変化」を確認します。
神経筋骨格系が原因の痛みは姿勢・動作で増悪・軽減する傾向にあります。一方、姿勢や動作で痛みの変化がない、また、ボディチャートで部位が広範囲(よくわからない感じ)の場合、生理周期、飲食、呼吸などの関連、心理社会的要因との関連などを評価します。
「ボディチャート」と「症状の傾向」を整理することで、痛みのタイプの推測、身体評価の計画が可能となります。
増悪要因
増悪要因から、原因となる部位・組織やメカニカルストレスを推測します。問題ない姿勢・動作や軽減要因も含めて考えると、より原因を絞れます。
問診例
- 「(具体的に)どのような姿勢や動作で痛みが強くなりますか?」
例えば、片側の腰部の痛みがあり、増悪因子が 立位(30分)、歩行(蹴り出し)の場合、共通点は腰椎の伸展です。
腰椎の伸展がストレスになっているのか? 椎間関節の圧迫ストレスや脊柱起立筋の過緊張がストレスか? 胸椎や股関節の伸展制限はないか? などを考えます。
また、問題ない動作や寛解動作を確認することも重要です。座位姿勢で寛解、自転車は問題ない場合、腰椎の屈曲による椎間関節の圧迫ストレスの軽減(椎間板の圧迫ストレスは増えますが)や脊柱起立筋の緊張↓、また、股関節はストレスになっていないのか?と考えることができます。
例えば、片側の腰部の痛みがあり、増悪因子が、前屈や靴下を履く、座位(30分)の場合、共通点は腰椎の屈曲や股関節の屈曲です。
腰椎の屈曲または股関節の屈曲がストレスになっているのか?椎間板の圧迫ストレス? などを考えていきます。
立位や歩行が大丈夫な場合は、伸展ストレスの可能性は低くなりますね
増悪要因は身体評価やマネジメントの方針を示してくれます。
例えば、急性期 、片側の腰部の痛み、NRSは7、増悪要因が寝返りの場合、主観的評価では睡眠障害の確認はMust、身体評価では腰椎回旋で疼痛を誘発する可能性があるだろうなといった仮説、マネジメントでは、寝返りの指導(抱き枕を使う、丸太のように寝返る)を検討することになると思います。
増悪要因を確認したら、追加の質問で増悪要因をより明確にすることが大事です。
例えば、「長く歩くと右膝が痛い」と聞いて、「Pa 歩行」「Pa 歩行 長時間」と記録するのはNGです。追加の質問を行うことで、身体評価がより計画しやすくなります。
歩行が疼痛誘発動作の場合、フェーズ、距離、スピード、歩幅、環境、靴などを追加で確認します。
足をつく、体重をかけると膝が痛い場合、荷重時、立脚期で疼痛増悪になります。身体評価では、足踏み、片脚立位などを評価します。
地面を蹴るとき足が痛い場合、遊脚期の問題、立脚期の支持性低下などを疑い、ヒールレイズなどを評価します。
環境面の違いもあります。例えば、外で歩くと痛いけど、家だと痛くない場合、身体機能・構造以外の問題として 環境、歩幅、スピード、距離、靴など考えられます。靴を変えてから歩くと痛いという追加情報があれば、靴の評価を行います。
軽減要因
軽減要因は増悪要因と合わせて考えることで、原因となる部位・組織やメカニカルストレスを推測しやすくなります。
また、身体評価の計画や介入の基本方針を示してくれます。
例えば、「歩くとで殿部が痛いが、買い物カートを使うと楽になる」といった場合(診断名はLCSと仮定)、腰椎伸展ストレスや荷重ストレスなどが考えられます。疼痛が強く、ADLが制限されている場合、補助具(杖、シルバーカー)などを検討します。
整形外科クリニックでは杖・車椅子は常備してありますので、身体評価にて、杖で歩く、車椅子(またはキャスター付き背もたれ椅子)を腰椎屈曲位で押して歩く、といったことを行い、疼痛の軽減を確認します。
補助具の使用が難しい場合、疼痛回避姿勢を指導する場合もあります。「胸の向いている向きを斜め下にしましょう」と指示して胸腰椎屈曲位にする、「歩幅を狭めましょう」と指示して股関節伸展動作を制限させることもあります。ちなみに、疼痛回避姿勢や動作を指導した場合は、一時的 temporary の措置であることを説明することが大切です。
24時間の変化
問診例:
- 「時間帯によって痛みは変わりますか?」
- 「朝は調子はどうですか?」
- 「夜は眠れていますか?」
症状が1日の中でどう変化するか、時間帯による症状の違いはあるのか、という情報は、疾患・病態の理解に役立ちます。
朝に症状がある疾患・病態といえば、代表的なのは関節リウマチでしょう。朝、こわばりが続く場合、関節リウマチの可能性が疑われます。他にも、足底腱膜炎の場合、朝の1歩目が痛い、というのもとても多い症状です。椎間板性腰痛の場合、朝は椎間板内圧が高いため痛みが誘発されやすい時間帯です。
朝は痛みがない、あってもこわばり、日中〜夕方にかけて症状が増悪する場合、変形性関節症が示唆されます。姿勢や動作などの反復性の負荷、持続的な負荷が加わっていることが考えられます。
夜の痛みは注意が必要です。夜に持続する激しい痛みは悪性腫瘍のレッドフラッグの1つです。他のレッドフラッグの有無を確認する必要があります。
夜間痛がある場合は、夜は眠れるのか、痛みは入眠時なのか、痛みで中途覚醒してしまうのか、追加で確認します。不安や何か考えてしまい、入眠・睡眠ができない場合は、Yellow flags を示唆します。
肩関節周囲炎の場合、夜間痛は炎症期に起こりえます。安静肢位の指導や投薬による痛みのコントロールが求められでしょう。拘縮期に痛みで中途覚醒してしまう場合、結滞動作および肩関節の内転・水平屈曲・屈曲位外旋の可動域制限の確認が必要になります。
まとめ
今回は、「症状の傾向」について解説しました。
症状の傾向の記録方法は様々ですが、私は表にしてまとめるようにしています(下図)
基本的に筋骨格系の症状・痛みの場合、「姿勢」「動作」「時間帯」に関係していることがほとんどです。主訴・ボディチャートの内容と合わせて、症状を整理することで疾患・病態の想起がしやすくなり、身体評価の計画も立てやすくなると思います。