「クリニカルリーズニング」という言葉、ご存知でしょうか? 

 

日本語では「臨床推論」です。

 

今から15年前、理学療法士になったばかりの私はクリニカルリーズニングのことを知りませんでした。

 

2010年だったと思いますが、オーストラリアでPT免許を取得された小形先生主催の徒手療法コースに参加した時に「クリニカルリーズニング」について学ぶ機会がありました。

 

クリニカルリーズニングの楽しさ、難しさを感じた私は、それから3年後、クリニカルリーズニングで有名な Mark Jones先生 がいる南オーストラリア大学に留学しました。学部の1年生からクリニカルリーズニングの授業があったのはとても楽しかったのですが、Mark Jones 先生は学部では特別講義の1回しかしないと聞いた時はかなり落ち込みましたね。

 

そんな昔話はさておき・・・

 

2024年、クリニカルリーズニングという言葉は以前よりも知られるようになったと思います。理学療法士の前期研修にも「クリニカルリーズニング」があります(とても勉強になる内容ですが、ちょっと新卒には難しい内容かなぁ)。クリニカルリーズニングを早い段階で学ことによって、臨床は大きく変わると思います。

 

今回は、理学療法士に必須の能力の1つ、クリニカルリーズニング、デュアルプロセスセオリー(二重過程理論)について紹介していきたいと思います。

クリニカルリーズニング(臨床推論)

クリニカルリーズニング(臨床推論)とは、なんでしょうか。

 

思考(Thinking )

 

臨床意思決定(Cinical decision making)

 

決断に至るまでの思考過程

 

仮説形成 

 

セラピストと患者の共同作業、相互関係

 

的確で安全な判断および行動をするための思考過程

 

といった言葉、文章で説明されます。

 

Mark Jones 先生は講義・セミナーでは、シンプルに説明していますが、著書では「エビデンスに基づく診療を導くために、患者、患者の背景、患者の臨床的問題を理解することを目的としたセラピストが患者と協力して行う内省的な質問と分析の過程」と述べています。

国内外の多くの著名な理学療法士が、「エキスパートになるのは経験年数ではない、クリニカルリーズニング能力を有していることがエキスパートの条件の1つである」と述べられています。

 

私が理学療法士になった時は、「経験年数」が理学療法士の上下を決めていたように思えます。

 

講習会に参加すると「何年目ですか?」とよく聞かれました。この質問は無意味だなと思っていた私は、1年目からサバを読んで答えていました。絶妙に相手と同じか、その上を狙っていました。当時の自分、とがってたなぁ、だいぶ痛い、と今では思いますが、その反骨心が原動力になっていたのも確かです。

 

今は講習会に参加しても「何年目ですか?」と聞く人が本当に減ったと思います。

 

経験年数といっても2つあると思います。ただ、単に年数だけが経験した経験年数と、知識・技術を積み重ねていった経験年数です。後者は尊敬できる経験年数です。

 

とは言うものの、残念ながら、2024年の今でも、理学療法業界は実力主義ではなく経験年数で待遇を決定する傾向にあります。大きい病院・クリニックは、特にその傾向にあると思います。一方、個人オーナーの整形外科クリニックは交渉の余地があり、経験年数だけで判断しないところもあるように思います。

 

デュアルプロセスセオリー(二重過程理論)

 

次のスライドを見て、質問に直感で答えてください。

正解は・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

5円です!

 

私は、ちゃんと10円と答えました(間違えました)。

 

人は直感的な思考をする傾向にあり直感はエラーにつながることを示す例題として、書籍などで引用されています。

 

認知心理学の理論の1つにデュアルプロセスセオリーというのがあります。この理論によると、人は2つの思考を用いて情報を処理するそうです。

System1は直感的思考であり、スピードは早いが、バイアスの傾向がありエラーにつながりやすい思考です。

 

System2は分析的思考であり、エラーのリスクは減りますが時間・労力を有しますSystem 2は、System 1を客観視し、誤った判断や行動を避けるために必要な思考です。

 

普段の生活ではSystem 1を多用していると思います。日常生活で System 2を使う時は、普段より高い物を買う時でしょうか。

 

理学療法士が臨床で用いるリーズニングとして、パターン認識は System 1、仮説演繹法は System 2で整理・説明されることがあります。

   

まとめ

今回は、クリニカルリーズニング、デュアルプロセスセオリーについて説明しました。

 

クリニカルリーズニング(臨床推論)にはさまざまなリーズニング(推論)があります。英語では 〇〇 reasoning 、日本語では 〇〇 推論、〇〇法 として紹介されています。

 

次回は、理学療法士が臨床で用いるクリニカルリーズニング、パターン認識と仮説演繹法について、説明したいと思います。

次回に続く。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です