非特異的腰痛(Non specific low back pain)とは、「脊椎に特異的な病理が見出せない腰痛(紺野2016)」「原因が特定できない腰痛(鈴木2019)」とされています。

過去の文献・書籍・ガイドラインでは、非特異的腰痛は腰痛の85%を占めると書かれていましたが、最近ではこの85%という数字は根拠がない、再考する必要があると言われています(相澤2020, 腰痛診療ガイドライン2019)。相澤(2020)は、85%という数字に関して、Deyo RA の論文の問題点(診断の根拠など)、紹介のされ方の問題点などを指摘しています。

整形外科専門医による詳細な診察では腰痛患者のうち78%は正確な診断が可能であると報告されています(鈴木ら, 2017)。

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Suzuki et al.(2016)は、「山口県の整形外科医院の腰痛患者320名を対象に、詳細な診察と身体所見を行った結果、腰痛患者のうち78%は診断可能であった」と報告しています。

評価項目は、身体所見、神経所見、画像所見、JOABPEQ、JOA score、SF-8、家庭環境や腰痛の程度に関するアンケート、としています。

腰痛は、筋筋膜性、腰椎椎間関節性、腰椎椎間板性、仙腸関節性、腰椎性圧迫骨折、腫瘍性病変、腰椎椎間板ヘルニア、感染、腰部脊柱管狭窄症、強直性脊椎炎、内科・泌尿器科・婦人科疾患、社会心理的要因、その他、の13に診断されています。

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しかしながら、この腰痛の特徴的身体所見と診断ですが、臨床で実施している医師もいると思いますが、実施していない医師も多くいるでしょう。

例えば、腰筋膜性腰痛では「筋硬結を触れる、One point tenderness、トリガーポイント」と書かれていますが、触診しない医師の場合、適切な診察がされていません。  

診察していない医師の診断名ほどあてになりません。患者に「診察では、どういった検査をしましたか?」とさりげなく聞いてみて「レントゲンを見て説明されました」と言われたら、その医師の診察はレントゲン上で否定した程度と考え、セラピスト自身で詳細な検査をする必要があります。

非特異的腰痛と特異的腰痛の判断は今後も重要

さて、非特異的腰痛の割合について再考する必要がありそうですが、非特異的腰痛と特異的腰痛を判断することは重要です。

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Suzuki et al.(2016)の山口県Study は、腰痛患者320名を画像所見だけでなく身体所見やJOABPEQなどを用いて心理社会的要因も含めて多面的に評価し診断しています。その上で、心理社会的要因(1名)または原因特定できない腰痛(69例)が22%であり、これが非特異的腰痛の割合であろうで述べています。4人に1人ですね。そして、原因特定できない腰痛については今回診断に含めなかった上殿皮神経について考察しています。

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本邦の腰痛診療ガイドライン、Manual Concepts、O’Sullivan の分類などでも、非特異的腰痛と特異的腰痛と分類するアルゴリズムがあります(*分類の基準についてはそれぞれ違います)が、

疾患に応じた特別なマネジメントが必要な特異的腰痛、将来的に手術が必要かもしれない特異的腰痛」を判断することが重要と考えています。

 

 

Specific low back pain というよりは、Specific management required low back pain でしょうか。

例えば、腰椎椎間板ヘルニアの場合、疼痛コントロールのための投薬、重症度によっては安静や疼痛回避動作の指導といったマネジメントが必要になります。特異的腰痛ではない腰痛に対して、「安静にしましょう」というアドバイスは行わないですよね。

腰椎圧迫骨折や腰椎分離症の場合、コルセットを一定期間着用する必要があります。特異的腰痛ではない腰痛に対して、継続的なコルセット着用は基本的に行わないです。

また、疾患によっては将来的に手術を検討することがあります。腰部脊柱管狭窄症、腰椎滑り症、側弯などですね。リハビリテーションを実施するも症状が良くならない、悪化してくる腰痛があります。その場合、保存療法ではなく手術療法を考えます。

疾患に応じた特別なマネジメントが必要な特異的腰痛、将来的に手術が必要かもしれない特異的腰痛の場合は、予後・マネジメントが変わるので要注意です!

参考文献

紺野2016:非特異的腰痛 その概念と診断手順、留意点

鈴木2019:非特異的腰痛

相澤2020:「非特異的腰痛=85%」はどこからきたのか

Suzuki et al. 2016 : Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low
Back Pain Study

鈴木2017: 非特異的腰痛の診断と特徴

腰痛診療ガイドライン 第2版, 2019

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