肩甲挙筋ですが、通常、肩甲帯の筋として考えられることが多いですが、頸椎に付着していることから頸部の動きにも作用します。
起始は第1〜4頸椎の横突起、停止は肩甲骨上角の内側縁、支配神経は肩甲背神経です。
頸部が固定された状態で、肩甲骨の挙上に主に作用し、菱形筋と小胸筋と協同して肩甲骨の下方回旋に作用します。
また、肩甲骨が固定された状態で、頸椎の伸展、同側の側屈、同側の回旋に作用します。
肩甲挙筋は頸椎に対して後方の剪断力 shear force を生成します。
頭部前方位姿勢は、前方への剪断力が生じるため、肩甲挙筋が延長位になり過活動およびストレスが生じます。そのため、ストレッチをすることは逆効果になる可能性が考えられており、ストレッチではなく、頭部位置や姿勢の修正、肩甲帯のエクササイズが推奨されます。
また、肩甲挙筋はC1-4 横突起と肩甲骨を垂直に結ぶ筋であり、過活動は頸椎に対して圧縮力を生じさせ、頸部痛の原因となる可能性が考えられています(Behrsin JF & Maguire K, 1986)。
健常者(22名, 平均24歳)を対象に、MRIを用いて他動の肩関節外転と等尺性収縮を行わせた肩関節外転における頸椎の分節の回旋を調べた研究では、右肩関節の外転90°までの等尺性収縮において頸椎の左回旋が観察されました(Takasaki, 2009)。考察では、僧帽筋や肩甲挙筋の収縮による回旋と述べられています。
まとめると、肩甲挙筋は頸部の動きにも作用し、肩甲挙筋の過活動や肩甲骨の位置異常は頸部痛の原因の1つになる、ということです。
肩甲挙筋の過活動は、不良姿勢、頭部前方位、その他の肩甲帯の筋力低下(僧帽筋下部・中部 etc.)などによって生じます。
動作時の頸部痛が肩甲骨の位置に修正にて消失する場合、肩甲帯機能が問題になっていることが多く、肩甲帯に対する介入が必要となってきます。
頸部痛の評価では、椎間関節の圧痛を確認する際に(特にC1-4)、肩甲挙筋の圧痛と間違えないように気をつけたいところです。
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肩甲挙筋の触診は、まず、腹臥位にて手を腰に置き肩甲骨を下方回旋させた状態にします。肩甲骨下方回旋位にすることで僧帽筋上部が弛緩します。この状態で肩甲骨挙上を軽く行なってもらい筋収縮を確認しながら触診していきます。
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参考書籍・文献
Behrsin JF & Maguire K:Levator Scapulae Action during Shoulder Movement: A Possible Mechanism for Shoulder Pain of Cervical Origin’, 1986, Australian Journal of Physiotherapy, vol. 32, no. 2, pp. 101–106.
Takasaki H, Hall T, Kaneko S, Iizawa T, Ikemoto Y. Cervical segmental motion induced by shoulder abduction assessed by magnetic resonance imaging. Spine (Phila Pa 1976). 2009 Feb 1;34(3):E122-6. doi: 10.1097/BRS.0b013e31818a26d9. PMID: 19179912.
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参考書籍については、何版まで出版されているのか必ずご確認ください。日本語版がでている書籍もありますが、版のずれが大きい場合は、英語版の最新書籍を購入することをおすすめします。
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私が持っているのは第5版ですが、2019年に第6版が出版されています。
私が持っているのは第6版ですが、2017年に第8版が出版されています。