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10年ぶりに改訂された腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

2021年、腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン の改訂第3版が出版されました。

 

 

2011年に第2版が出版されて以来なので、10年ぶりの改訂です。

 

第2版はClinical Question のみで34問だったのが、第3版では Background Question が23問、Clinical Question が4問、Future Research Question が1問の合計28問になりました。

 

ポイント

臨床での疑問には、Background question と Foreground question の2つがあります。

Background question は、調べて情報を得れば解決できるような学問的な疑問や教科書的な疑問で、疫学や統計などが含まれます。ガイドラインでは、システマティックレビューの対象外で推奨なども不要です。

Foreground question は、臨床現場での判断に関わる目の前の患者固有の問題に対する疑問、狭義の本来のClinical questionであり、PICOで構造化することができます。ガイドラインでは、推奨が提示されます。

<参考>
小島原2019:信頼される診療ガイドライン:「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018年版」の作成

臨床疑問、2つに分けられる?【中外医学社】

EBPT用語集:フォアグラウンドクエスチョン foreground question

 

第3版では、Background questions がかなり増えましたね。内容はというと、全5章となっており、「第1章 疫学・自然経過」「第2章 病態」「第3章 診断」「第4章 治療」「第5章 予後」となっています。

第2版と第3版の「治療」を比較したいと思います。

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン 第2版(2010)

第2版の治療はClinical question が12問ありました(Minds ガイドラインライブラリにて、オンラインで閲覧が可能です)。

第2版の「治療」では、セラピストが直接関与するものとして、spinal manipulation と牽引療法がありました。

 

spinal manipulationは、「Spinal manipulationが有効か否かを判定するための腰椎椎間板ヘルニアに焦点をあてた十分な科学的根拠を示した研究はない(グレードⅠ)」、

 

牽引療法は「腰痛に対する牽引療法が有効であるとする報告はあるが,腰椎椎間板ヘルニア症例に限定すると,牽引療法単独による治療効果について十分に示した研究はない.画像と臨床所見から腰椎椎間板ヘルニアと明らかに診断された症例に対して,腰椎牽引療法のみを行うprospective studyがその有効性検討のうえで必要である(グレードⅠ)」

 

という結果でした。

 

腰椎椎間板ヘルニアの診療ガイドライン 第3版(2021)

第3版の「治療」では、Background Question(BQ)が3問、Clinical Question (CQ)が4問、Future Research Question(FRQ) が1問となっています。

内容はというと、

  • BQ1  腰椎椎間ヘルニアに対する治療のコンセプト
  • BQ2 各種手術様式
  • BQ3 (緊急)手術の適応
  • CQ1 薬物治療は有用か
  • CQ2 硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法は有用か
  • CQ3 手術的治療は保存的治療と比べて有用か
  • CQ4 手術的治療のなかで推奨される治療は何か
  • FRQ1 理学療法や代替療法は有用か

 

第2版よりも、質問内容が簡便になり、理学療法に関する記述 が増えました。

 

 「BQ1  腰椎椎間ヘルニアに対する治療のコンセプト」では、一般的に行われている治療として、「薬物療法」「硬膜外ブロック注射」「理学療法」「手術的治療」を挙げています。

  

理学療法

腰椎椎間板ヘルニアに対する疼痛あるいは機能障害に対し、疼痛の緩和、QOLの向上を目的に行われる。ストレッチや筋力強化訓練などの運動療法は、体幹・四肢の可動域の改善、筋力の強化、持久力の増強、有酸素運動能の向上、安定性の向上などをもたらし、結果として運動能力の向上に有用である。

(腰椎椎間板ヘルニアの診療ガイドライン 第3版, 2021)

 

また、「FRQ1 理学療法や代替療法は有用か」という問いに対して、

 

運動療法・牽引療法・超音波療法・コルセットが挙げられており、推奨度は「推奨なし」、エビデンスの強さは「D(非常に弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」、とのことでした。

推奨文として、「腰椎椎間板ヘルニアの治療における理学療法や代替療法の効果は限定的である。」とのことです。

   

今回のガイドライン作成に関して効果の推定値に関するエビデンスが不足していたようで、効果の更なる検証が期待される、と書かれています。

 

今回の日本のガイドラインでは、「推奨なし、エビデンスの強さはD」という結果でしたが、ガイドラインに理学療法に関して記述されたのは良いことだと思います。

  

さて、実際の臨床どうでしょうか。

  

腰椎椎間板ヘルニアのマネジメントには、徒手療法、運動療法、患者教育、作業環境の修正、習慣の修正などがあります。

 

徒手療法では、神経根の圧迫に対して、圧迫ストレスを減らすために問題となっている分節の椎間孔を拡大する関節モビライゼーションといった治療方法があります。

  

関節モビライゼーション実施後に、感覚・筋力が即時的に改善することもよくあります(持続させるためには工夫が必要ですが)。

   

患者教育、作業環境・習慣の修正は個々の患者(性格・考え方など)を考慮して、何から始めるか、どれならできるか、どうしたらできるか、などを考えて実施する必要があります。ここはセラピストの腕の見せ所ですね。

  

ガイドラインは臨床で何をするかという判断の1つに役立てるのに有用です。また、患者からよく質問される内容だったり、患者に説明しなくてはいけない内容に関する情報が書かれています。

 

ガイドラインは改訂に数年かかるので治療に関して最新の情報を得るためにはシステマティックレビューやRCTを確認する必要があります。

 

患者さんからよく聞かれる質問として「手術した方がいいですか?」「手術とリハビリどっちがいいですか?」「注射ってどうなんですか?」「ヘルニアって消えるんですか?」などがありますが、これらの問いに対してはガイドラインを読めば答えられます。

 

Minds ガイドライン ライブラリで確認できるものも多いので、興味ある方は閲覧してみてください。

 

参考文献・サイト

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版

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