
マリガンコンセプト (Mulligan Concept )とは、1970年代にニュージーランドの理学療法士 Brian Mulligan が発展させた徒手療法の1つです。
評価と治療が一体化しており、基本原則PILLに当てはまれば、時間も短く効果も高い治療です。
マリガンコンセプトのSNAGは、関節に対する疼痛軽減テストとして用いることも可能です。
SNAG の略は、Sustained Natural Apophyseal Glide です。
意味はというと(by ライフサイエンス辞書にて)
- Sustained・・・持続、維持
- Natural ・・・自然
- Apophyseal ・・・骨端、骨突起の、apophyseal joint 椎間関節
- Glides ・・・滑り
SNAGとはわかりやすく言うと、関節に滑りの力を加えて自動運動をする治療技術です。
マリガンコンセプトでは、滑りの力を加えながら自動運動を行う治療技術のことをMWM(Mobilization With Movement)と呼びますが、脊椎ではSNAG と呼び名がかわります。
つまり、脊椎のMWMです。
SNAGは、頚椎、胸椎、腰椎において用いられます。
今回は頚椎のSNAGについて復習したいと思います。
<マリガンコンセプトの基本原則PILL? という方は、こちらの記事をご覧ください。>
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頚椎のSNAG
下位頚椎(C3-7)の動きは、屈曲、伸展、側屈、回旋です。
SNAGは屈曲、伸展、側屈、回旋で用いることができます。
手順


- 患者は座位にて、セラピストは患者の後方に立つ。
- 頚椎中間位にて、一方の母指の側面(Contact thumb)を治療する関節の棘突起(Central)または片側の椎間関節の上位レベルの椎弓板(Unilateral)に置き、もう一方の母指の指腹(Motive thumb)を重ねる。椎弓板に置く場合、なるべく棘突起に近づける。母趾以外の指は軽く顔にかかるようにする。
- 重ねた母趾の指腹にて前上方(眼の方向)に滑りの力を加えながら、自動運動を行う。動きに合わせて滑りの方向を変える。開始肢位から自動運動、そして、開始肢位に戻るまで滑りの力を加え続ける、
- 患者は一方の手を頭頂部に置き、患者自身で最終域でオーバープレッシャー(2秒)を行う。
*効果持続のためにオーバープレッシャーは重要
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母指を置くときは軟部組織の緊張を取り除くために、目的の部位よりもやや下からコンタクトします。示指の向きはなるべく眼の方向になるといいでしょう。
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Unilateral SNAG のコンタクトする母指は椎弓板なのか関節柱なのか疑問に思った方は、こちらをご覧ください。
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SNAG は痛みのある場所から始める
痛みの場所、制限方向によって、どこに滑りの力を加えるのか、がポイントになります。
正中に痛みがあるのか、片側に痛みがあるのか、です。
基本的に、疼痛が片側であれば、疼痛部位(片側)に行い、効果がなければ、棘突起(正中)または 反対側の上位の椎弓板に行います。
分節レベル、滑りの方向、滑りの力は適時、調整です。
私は痛みの部位を指してもらい、片側であれば、まずそこにSNAGを行います。効果がなければ滑りの方向・力を調整、そして「痛みの部位はここですか?ここより上ですか?下ですか?」というように確認後、部位が違う場合は分節レベルを変えて再度、SNAGを行っています。
慣れていない時期は効果がでるのに時間がかかってしまいましたが、臨床を重ねていき時間が短縮できてきました。
今回、頚椎のSNAG を復習しました。
治療技術はだんだんとオリジナルになってくる場合があります。それがいい場合もあれば、悪い場合もあります。
治療技術は何度も復習が必要ですね。
参考文献・関連書籍など
- Brian R Mulligan:MANUAL THERAPY NAGS, SNAGS, MWMS etc, 6th, 2010
- Bill Vicenzino et al.:Mobilisation with Movement The art and the science , 2011
- Wayne Hing, Toby Hall, Brian Mulligan:The Mulligan Concept of Manual Therapy 2d, 2019