頸部痛+上肢の放散痛を伴っている場合、神経学的テスト(筋力・感覚・反射)や整形外科テストなどを用いて関連痛なのか、神経障害に伴う疼痛なのか判断する必要があります。

 

整形外科テストとして

  • Spurling's test
  • Upper Limb Tenstion Test(ULTT)
  • Shoulder abduction test(relief)
  • Neck traction/distraction test 
  • Arm Squeeze test

などがあります。

 

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Thoomes EJ ら(2017)のシステマティックレビューによると、頸部神経根症のテストして、Spuling's test, Upper limb neural tension test, Arm Squeeze test, Shoulder abduction test, Traction-distraction test の5つのうち1つ以上の研究で評価されたのはSpurling testのみで、特異度は0.89~1.00(95%CI:0.59~1.00)と高い範囲で、感度は0.38~0.97(95%CI:0.21~0.99)と幅があったと述べています。

採用されている研究の患者は、18歳以上、頸椎椎間板ヘルニアまたは変性の頸椎症性の変化による神経根圧迫に伴う頸部神経根症を対象として、身体評価とMRI、CT、または、術中所見で比較されたものを研究に含めています。[/st-cmemo]

 

今回は、頸部神経根症の鑑別テストとして有名なスパーリングテストについて紹介したいと思います。

スパーリングテスト

スパーリングテストは頚椎の姿勢により椎間孔が狭小化し,圧迫を受けた神経根のデルマトロームに一致した上肢への放散痛を誘発させる徒手検査で、1944年にSpurlingらが neck compression testとして先立って論文報告し,1949年にJacksonがhead compression testとして書籍上で報告しました(李・帖佐 2017)。

  

オリジナルの Spurling's test は頚椎を側屈してから、圧迫です(Magee DJ:Orthopedic Physical Assessment 6e, 2014)(李・帖佐 2017)。

 

しかし、スパーリングテストの方法はさまざまな変法があります。Thoomes EJ ら(2017)のシステマティックレビューで採用された研究の方法を確認すると、方法はバリエーションがあります。

 

Shabat et al., 2012 [20] 伸展・同側回旋・圧迫

 

Shah et al., 2004 伸展・同側側屈・圧迫

 

Viikari-Juntura et al., 1989 同側側屈・同側回旋・圧迫

 

また、類似したテストとして、the maximum cervical compression test があります。これは、側屈、回旋、次に伸展、最後に圧迫を行なっています。

 

どの方法がいいのでしょうか?

 

臨床では、スパーリングテストの順序については、スパーリングテストの前に行なっている自動運動テストの結果を基に適時、調整しています。

 

例えば、伸展動作で痛みが誘発される場合は側屈から行う、側屈動作で痛みが出る場合は伸展から開始する、といった感じですね。

 

スパーリングテスト 

 

手順

1から5をすべてする必要はなく、上肢の症状がでたら、そこでストップです。

  1. 患者は座位にて、セラピストは後方に位置する
  2. 患者は疼痛側に頸椎を側屈(回旋)する 
  3. 患者は頸椎側屈位の状態で、疼痛側に頸椎を回旋(側屈)する
  4. 患者は頸椎側屈・回旋位の状態で、頸椎を伸展する
  5. セラピストは頭部に手を置き、圧迫を加える 

判定:頸部痛と上肢の放散痛が再現される場合、陽性とする。*頸部痛のみは陽性ではありません。

感度:0.38~0.97 / 特異度 0.89~1.00  (Thoomes EJ et al. 2017)

 

You Tube動画で確認

You Tube には、世界中の人が動画を投稿しています。You Tube 動画は教材としても扱われいることもあります。注意点として、誰(信頼できる人物なのか)が投稿しているのかを確認し、3つ以上の動画を見ることをおすすめします。

 

この動画では、伸展から開始すると述べていますね。伸展、側屈、そして、圧迫、です。

 

側屈、圧迫、としていますね。

 

模型を使って説明してくれています。手順としては、回旋、側屈、伸展としており、圧迫はしていません。

 

複数のテストを組み合わせて評価しよう

Thoomes EJ ら(2017)は、

本研究の内容を臨床で適用するにあたって、臨床家にとっては、複数のテストを組み合わせることで最良のエビデンスになるだろう。本研究の結果からは、既往歴や他の身体所見が一致している場合、Sparling's test、Traction-distraction test、Arm Squeeze test の陽性の組み合わせは頸部神経根症の可能性を高めるために使用され、ULNTとArm Squeeze testの組み合わせの陰性の結果は、可能性を下げるために使用されるかもしれない。しかし、検査項目群をさらに開発し、推定値の精度を向上させるためには、より質の高い研究が必要である。」

と述べています。

 

神経障害を除外また確定するためには1つのテストだけでは判断が難しく、Thoomes らが述べているように複数の検査を実施することが推奨されるでしょう。

 

放散痛を伴う頸部痛患者に対する整形外科テストのポイントとして、今まさに疼痛がある場合は疼痛軽減テスト(Distraction test または Shoulder abductionなど)から開始し、今まさに疼痛がない場合は疼痛誘発テスト(Spurling's test または ULNTなど)を行います。

  

主観的評価(問診)から神経障害が疑われる場合、客観的評価の時間また評価内容が変わることに留意する必要があります。

 

具体的には、神経学的検査(筋力・感覚・腱反射)と整形外科テストが加わるので、より時間がかかります。

 

セラピストは、時間配分を考える必要があります。

 

Thoomes らによるシステマティックレビューでは、対象としている患者は頸椎椎間板ヘルニアおよび変性の頸椎症が含まれています。

 

変性の頸椎症の場合、問題が頸部だけでないことが多々あり、多角的な評価が必要になってきます。

 

参考文献・関連書籍など

李・帖佐:これだけは知っておきたい、整形外科的徒手検査法第16回頚椎_Spurling test, Jackson test, 2017

Thoomes EJ et al.:Value of physical tests in diagnosing cervical radiculopathy: a systematic review, 2017

 

2020年に第7版が出版、整形外科テストの書籍の決定版!

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