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仙腸関節障害の検査:Laslettの研究論文 2005年と2019年を比較

仙腸関節障害の整形外科テストはたくさんありますが、「複数のテストを実施して○○個のテストが陽性の場合に仙腸関節障害と判断する」というのがあります。

 

英語では、”Cluster”いう単語で紹介されたりします。

 

Mark Laslett et al. が2005年に発表した仙腸関節の整形外科テストの組み合わせは、臨床でよく用いられているCluster の1つです。

 

しかし、さまざまな書籍で紹介されているのですが、紹介の仕方もさまざまです。また、評価の1つである Thigh thrust test については方法が若干異なっていることがあります。

 

今回は、書籍での紹介の違い、また、Laslett の2005年の論文を確認するとともに2019年の論文について紹介したいと思います。

 

仙腸関節障害の整形外科テスト by Laslett (2005)

2005年に発表した論文では5つの整形外科テストが紹介されています。

Distraction test

Thigh thrust test

Compression test

Sacral thrust test

Gaenslen's test

Mark Laslett はFacebook 上で動画を公開していますので、参考にしてください。

https://www.facebook.com/DrMarkLaslett/videos

 

書籍によって異なる引用内容

<書籍>Diane Lee:The Pelvic Girdle 4e, ELSEVIER, 2011

Laslet et al (2005) have found that when any two of the four non-specific provocation tests(distraction, compression, thigh thrust, sacral thrust)are positive, the SIJ is a source of pain.

(4つの非特異的疼痛誘発テストのうち2つが陽性の場合、仙腸関節が疼痛の原因であることを発見しています。)

<書籍>赤坂・竹林・三木:非特異的腰痛のリハビリテーション, 羊土社, 2018

基本的には5つのテストをすべて行い、そのうち3つが陽性となった場合高い確率で骨盤帯痛を疑うことが可能となる。

 

<書籍>成田:脊柱理学療法マネジメント, MEDICAL VIEW, 2019

ストレステストは、thigh thrust test, compression test, distraction test, Gaenslen test, Sacral thrust test の5つのテストで、3つ以上陽性だと感度94%、特異度78%となり、仙腸関節の問題である可能性が非常に高くなる。

 

とありますが、テストの順番などについては説明がありません。

臨床では手際の良さが求められます。

実際、Laslett(2005)の研究論文では図を用いて仙腸関節障害のテストの手順、どのテストから実施するかを説明しています。

 

書籍だけではわからない、説明されていないことはよくあるので、気になったら自分で調べるしかないです。

 

Laslett 2005

  1. 初めに、特異度の高いDistraction test、次に 感度の高いThigh thrust testを実施する。2つとも陽性であれば、仙腸関節障害と判断する。
  2. Distraction test と Thigh thrust test のうち、どちらか1つが陽性であれば、次に、側臥位にて Compression test を実施する。陽性であれば仙腸関節障害と判断する。
  3. Distraction test と Thigh thrust test のうち、どちらか1つが陽性で、Compresssion test が陰性であれば、腹臥位にて Sacral thrust test を実施する。このテストが陽性であれば、仙腸関節障害と判断する。
  4. 全てのテストが陰性(ここでGaenslen's test が登場)であれば、仙腸関節障害の可能性は低い。

6つの検査のうち3つ以上が最も高い尤度比(4.29)をもたらすが、検査からGaenslenの検査を除去し「残りの4つの検査のうち2つの検査が陽性」という規則を適用しても、ほぼ同等の結果が得られる(尤度比 4.0)。Thigh thrust test とdistraction test は、それぞれ最も高い感度と特異度を持っているので、最初に行うことは合理的である。

(Thigh thrust test (感度88%/特異度69%)、distraction test (感度60%/特異度81%))

 

背臥位で distraction test を行い、次にthigh thrust test、側臥位にして compression test、腹臥位にして sacral thrust を実施するという流れですね。

そして必ずしも全部のテストをする必要はない、ということですね。

 

この手順だと効率がいいです。

 

そして、Conclusion 結論 では

Provocation SIJ tests have significant diagnostic utility.

(仙腸関節の誘発テストは診断において重要かつ有用である。)

Six provocation tests were selected on the basis of previously demonstrated acceptable inter-examiner reliability.

(6つの誘発テストは、以前に実証された検者間信頼性に基づいて選択された。)

Two of four positive tests (distraction, compression, thigh thrust or sacral thrust) or three or more of the full set of six tests are the best predictors of a positive intra-articular SIJ block.

(4つのうち2つのテストが陽性または6つのうち3つ以上が陽性の場合、関節内SIJブロック陽性の最良の予測因子である。)

When all six SIJ provocation tests are negative, painful SIJ pathology may be ruled out.

(6つのテストがすべて陰性の場合、疼痛性の仙腸関節の病態を除外できるだろう。)

と述べています。

 

2019年、Laslett は新しい論文を発表

 

2019年、Mark Laslett は仙腸関節障害の診断について新しく論文を発表しました。

 

14年たっても発展させる姿勢はすごいですね。

 

いくつかの変更点があります。

 

最初に疼痛部位の確認が加わりました。

疼痛部位が下肢または腰部の場合は仙腸関節障害の可能性が低いと述べられています。

ちなみに、仙腸関節障害のテストにOne finger test というのがあります。痛い場所が上後腸骨棘(PSIS)の2cm以内であれば陽性(感度53.3%, 特異度85%)となります。*このテストだけで仙腸関節障害と判断はできません。

 

また、マッケンジーの評価にて椎間板障害を判断しています。

 

仙腸関節障害を判断する段階では、「distraction、compression、thigh thrust、sacral thrust、の4つのうち2つが陽性の場合、仙腸関節障害の可能性が高い、」と2005年の論文と同じことを述べていますが、

「distraction、compression、thigh thrust、sacral thrust、Gaenslen's test、heel bump test の6つのうち、3つ以上が陽性の場合、仙腸関節障害の可能性が高い」

 

というように、荷重した状態でのテストが加わりました。

 

仙腸関節障害の検査について

 

2005年のLaslett 論文はとても有名でかつ臨床で実践されていますが、今後は、2005年版の論文で紹介されている方法だけだと検査としては足りない、また、情報としては古いです。

 

2005年版の疼痛誘発テストはすべてセラピストが負荷を加えるテストで、荷重した状態での検査がありませんでした。

 

仙腸関節障害の1つの病態に、”下肢の負荷が骨盤に加わることで疼痛が誘発”というのがあります。

 

つまり、Force closure の問題がないか評価する必要があります。動作では、患者が自動で下肢を挙上する、また、ステップ時に時に疼痛が誘発されるか確認が必要です。

 

Laslett はheel bump test を含めましたが、他にも代表的な検査として、ASLR(Active straight leg test)、One standing leg test(Gillet test / Stork test)などがあります。

 

また、疼痛誘発された時にすぐに仙腸関節のモビライゼーションしながら、再度、疼痛誘発動作を行い疼痛の軽減・消失を確認するといった方法もあります。

 

Laslett の方法をふまえて、感度・特異度、また手順も考慮しつつ、患者に応じた評価が必要となってくると思います。

 

参考文献・関連書籍など

Laslett et al. :Diagnosis of Sacroiliac Joint Pain: Validity of individual provocation tests and composites of tests, 2005

Laslett et al. :Clinical Diagnosis of Sacroiliac Joint Pain, 2019

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