非特異的腰痛とは、「脊椎に特異的な病理が見出せない腰痛」「原因が特定できない腰痛症」と言われ、腰痛全体の85%を占めると言われています。
非特異的腰痛の85%について知りたい方はコチラもご覧ください。
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さて、腰痛があるにも関わらず画像所見はさほど問題ない場合、患者・クライアントに対してどのような説明がいいでしょうか?
- 画像所見以外の原因の可能性を提案する
例)「画像上は問題ありません。柔軟性、筋肉、身体の使い方といったことを確認しましょう」 - 画像所見と症状を結びつけるように何かしら伝える
例)「椎間板が狭くなっています」「変性があります」 - 加齢による構造的変化があることを説明する
例)「年齢とともに骨や椎間板の変化はありますよ」
この中で、1、3の説明ならいいですが、2は適切ではありませんよね。
2を行う医師と働いていたらセラピストのフォローが必要な場合があります。
腰痛の症状と画像所見の関連ですが「腰痛の症状と画像所見が一致しない、関連性が低い」ということが広く知られています。
2001年、雑誌Spine に発表された有名な論文(Prospective cohort study)、Jarvik JJ et al. 「The Longitudinal Assessment of Imaging and Disability of the back (LAIDBack) study」があります。
内容を確認してみましょう。
現在、腰痛・坐骨神経痛がない成人(平均年齢54歳:35歳〜70歳)148名を対象に、腰部MRI(Magnetic responance imaging)を実施した結果、
- 椎間板変性(Disc degeneration) 91%
- 椎間板の高さ減少(Loss of disk height) 56%
- 髄核突出(Protrusion) 32%
- 線維輪の断裂(Annuar tear) 38%
ということでした。
[st-cmemo myclass="st-text-guide st-text-guide-memo" fontawesome="fa-pencil" iconcolor="#919191" bgcolor="#fafafa" color="#000000" bordercolor="" borderwidth="" iconsize=""]対象者は”現在、腰痛がない”ということですが、腰痛の既往歴は、0回が47%、1〜5回が39%、5回以上が15%となっています。[/st-cmemo]
筆者はキーポイントとして5点述べています。
- 腰痛がなくてもMRIにおいて高い有病率を示している。
- 中等度・重度の正中の脊柱管狭窄、神経根圧迫、髄核脱出(Extrusion) は診断的・臨床的に関連している。
- 髄核脱出と神経根圧迫は加齢と関連していなかったが、以前の腰痛と関連していた。
- 椎間板膨隆、椎間関節の変性、終板の変化、中等度の腰椎滑り症は、加齢によって増えているが、腰痛の既往歴によって増えていない。
- 椎間板の変性、椎間板の高さ減少は、加齢と腰痛の既往歴と関連していた。
腰痛がなくてもMRIで変性の所見があった = MRIで変性があったとしても腰痛がない人がいる、ということです。
それをふまえて変性を心配する腰痛患者に対するアドバイスについて考えてみたいと思います。
変性を気にする腰痛患者に対する適切なアドバイス
「変性があると言われた、もう治らない」
「変性があると言われた、どうしよう」
「椎間板が狭くなっていると言われた、だから良くならない」
画像所見で言われたことを過度に気にしている、改善に影響を与えそうな患者・クライアントの場合、セラピストがするべき適切なアドバイスとは何でしょうか?
「変性は顔のシワと一緒です」
「変性は白髪と一緒ですよ」
「腰痛がない人でもMRIで変性があったという有名な研究があります。変性があるから腰痛、というわけではないんですよね。年齢的な変化は誰にでもあります」
といったアドバイスが患者・クライアントを元気付ける、安心を与えるアドバイスだと思います。
変性が疼痛のすべての原因ではないんですよね、原因の1つかもしれませんが。
また、画像所見に問題がないにもかかわらず腰痛がある場合、
「骨は大丈夫です。レントゲンに映らない部分、例えば、柔軟性、筋力、生活習慣、身体の使い方、などを確認しましょう」
といったアドバイスもいいと思います。
いろいろなアドバイスがありますが、患者・クライアントに安心を与える言葉かけをが大事ですね。
「画像所見と症状は一致しない場合がある」という知識を持ちつつ、アドバイスを工夫したいですね。
参考文献・書籍
紺野:非特異的腰痛—その概念と診断手順,留意点, 2016, 脊椎脊髄ジャーナル
相澤:「非特異的腰痛=85%」はどこからきたのか, 2020, 臨床雑誌整形外科
鈴木・他:非特異的腰痛の診断と特徴, 2019, 脊椎脊髄ジャーナル
関連する書籍の紹介
「腰痛診療ガイドライン 2019」2019年に改訂第2版が出版。