主観的評価(問診)、第2回目です。

  

前回は、エキスパートと初学者の主観的評価(問診)の違い、初回評価用紙のメリット・デメリットについて解説しました。

 

主観的評価で情報を収集しながら疾患・病態を理解し、治療同盟を構築していきます。初回評価用紙はメリットもデメリットもありますよ、という内容でした。

 

主観的評価では、問診スキルを駆使して情報を収集しながら患者さんの病態・疾患を理解しつつ、コミュニケーションスキルを同じく駆使して信頼関係の構築を図っていきます。

 

今回は、情報を収集するためのスキル「問診スキル」について紹介したいと思います。

 

問診スキル

 

Open ended questions

 

Opne ended questions (開かれた質問)は、患者が経験を自由に話せる方法です。主観的評価の最初に用いられることが多いです。

 

利点は、患者の主訴や考えていることを把握しやすい、欠点は、時間がかかる、です。理学療法士の場合、2単位(40分)ならOpen ended questions で始めることができると思います。

 

問診例として「今日はどうされましたか」ですが、整形外科クリニックで働く理学療法士の場合は注意が必要です。なぜなら、先に医師の診察があるからです。「今日はどうされましたか」と聞くと、「カルテ見ていないの?_」と言う患者がいるんですよね・・・。

 

自己紹介した後に「今日、初めてなのでお話をお聞かせください」と言った時に、面倒くさそうな顔をする患者は注意が必要です。「カルテ見てないの?」の対策として、「〇〇ということですが」または「カルテを確認しましたが」と一言入れると対策になります。

 

問診例:

  • 「〇〇ということですが、その後、調子はいかがですか?」
  • 「今、お困りのことは何ですか?」
  • 「〇〇ということですが、〇〇さんのお身体の状態についてお話を伺ってもよろしいですか」
  • 「一通り、カルテを確認しました。〇〇さんの今のお身体の状態について、詳しく知りたいのでお話を伺ってもよろしでしょうか」

 

ちなみに、英語では、

  • 「Can you tell me your story?」
  • 「Please tell me what brings you here today?」
  • 「Can you please tell me the details of how you were injured? 」

といった聞き方があるそうです。

  

Closed ended questions

 

Closed ended questions (閉じられた質問)は、単語やYes / No で答えられる方法です。

 

利点は、問題点の明確化や時間短縮です。欠点は、症状を誘導する危険性があります。

 

問診例:

  • 「どこが痛いですか?」→「右膝の内側です」
  • 「お尻より下に症状はありますか?」→「ないです」
  • 「頭痛、めまいはありますか?」→「ないです」
  • 「痺れはありますか?」→「」親指が痺れます」

 

私は、初回リハが 1単位(20分)の場合、Opned ではなく Closed を用いています。

 

Graded response questions

 

Graded response questionsは、状態をより詳しく聞く、具体的な状態を確認する方法です。

 

利点は、問題点の明確化、です。欠点は、患者が答えられない場合がある、でしょうか。

 

問診例:

  • 「長い時間、座っていると腰が痛くなる」
     → 「どのくらい座っていると痛くなりますか?」
     →「痛くなった時、どうすると楽になりますか?」

時間や距離などで客観的指標が作れたら、重症度の判断や効果判定に有用だと思います。5分で疼痛が誘発されていたのが、15分、30分と伸びていけば、それは改善を示す1つの指標になるでしょう。

 

  • 「歩いているとふくらはぎが痛くなる」
     → 「体重がかかる時、蹴る時はどうですか?」
     → 「何分/何m くらいで痛くなりますか?」
     → 「家の中と外で変わりますか?」

歩行で疼痛が誘発される場合、時間、距離、立脚期/遊脚期、歩幅、環境、靴などを追加で確認することで、問題点がより明確化し、身体評価の内容も絞られてきます。例えば、「足を着く時に痛い」となれば、座位から立ち上がった後に、足踏みや片脚立位を評価しようかな、となります。 

 

  • 「足を上げると腰が痛い」
    → 「朝、靴下を履くときはどうでしたか?」 

足を上げるのと腰が痛い場合、股関節屈曲または腰椎屈曲が疼痛誘発動作になります。靴下を履くときも痛かった、座って履いたという追加の情報が得られたら、身体評価では足踏み、片脚立位、また、ASLR などを計画します。ASLRで疼痛が誘発されたら、腹横筋や内・外腹斜筋を圧迫し疼痛軽減を確認していきます。

 

  • 「夫と2人で暮らしている」
     → 「旦那さんはお元気ですか?」

整形外科クリニックにおいても、高齢、転倒リスクがある、サポートの必要性がある患者さんの場合、キーパーソンを確認します。夫と2人で暮らしていると言われて終わるのではなく、追加の質問をすることでサポートが必要な方がいるのかどうかも判断ができます。

 

Multiple options questions

 

Multiple option questions は、質問にいくつかの選択肢を入れる方法です。

 

利点は、回答が出てこない場合に有効です。欠点は、症状を誘導する危険性があります。

 

問診例:

  • 「痛みは、鋭いですか?鈍いですか?」
  • 「腰の痛みは、左、真ん中、右ですか?」
  • 「痛みの場所は、ここよりも上ですか?下ですか?」

 

Recapitulation 

 

Recapitulation(要約)は、話の内容を整理する方法です。問診の最後に行われることが多いです。

 

利点として、話の内容を整理できる、聞き逃しを防ぐ、です。また、話を受け止めている・理解していることを患者に示すこともできます。これは、コミュニケーションスキルとしても考えられるでしょう。

話を受け止めていることを示すので、話がループする患者に対してはとても有効な方法の1つだと思います。

 

例:

  • 〇〇さんのお話をまとめると・・・
    1ヶ月前に徐々に腰の痛みが始まり・・
    前に屈んだり、靴下を履くときに、右の腰が痛くな
    ご自身が考える理由として、良くない姿勢、運動不足、ということですね。
  • では、次にお身体の状態を確認していきたいと思います。

  

問診スキルの練習

私は、学生・新卒の理学療法士と一緒に練習する時は、典型的な症例を基に問診スキルを確認しながら練習しています。

 

例えば、「どこが痛いですか?」という質問で主観的評価を開始した場合、「 ”どこ”、”痛み” と絞っているので、Closed に近いよね。それも悪くはないけれども、患者が痛みのことだけを話す可能性もあるから、その場合は、痛み以外の症状について確認することが必要だよね。」とアドバイスをしています。

 

まとめ

今回は、問診スキルについて解説しました。

 

問診スキルを使いながら主観的評価を行うと、効率よく情報を収集できるようになると思います。

 

情報を収集するためには、患者に質問して答えてもらう、だけでなく、患者が自ら話す、ことも必要です。問診スキルだけでなく、コミュニケーションスキルが不可欠です。

 

次回は、信頼関係の構築、治療同盟を結ぶために必要なスキル「コミュニケーションスキル」について説明したいと思います。

次回に続く。

初回評価用紙

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