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頸椎の客観的評価

客観的評価 (O/E:Objective examination)とは身体評価のことを指し、患者の身体機能・構造の情報を収集するための評価です。

主観的評価(問診)を終えた後に、想起される疾患・病態を基に客観的評価の項目・順番を決定します。

脊椎徒手療法コースでは、客観的評価(身体評価)をフローチャートにして説明しています。

頸椎の客観的評価は、姿勢、自動運動テスト、動作分析、複合運動テスト、疼痛軽減テスト、鑑別テスト、他動生理的運動テスト、他動副運動テスト、軟部組織の評価、運動制御の評価、で構成されています。

「脊椎徒手療法コース3 下位頸椎・上位胸椎の評価と治療」の「講義3 頸椎の客観的評価」の一部を説明します。主観的評価にて、外傷、神経、頭痛などをある程度否定した上での評価をイメージしてください。

姿勢

客観的評価の最初は姿勢です。

姿勢評価では、頭部の位置、頭部の傾斜、頚部のシワ、胸腰椎の弯曲、肩甲骨の位置、軟部組織の状態などを評価します。

主観的評価の段階である程度の座位姿勢は評価しておきます。Slumped だな、FHPだな、です。

頭部の位置は、肩を基準に頭部の重心(耳の前上方あたり)がどこに位置しているか把握します。

頭部前方位姿勢(FHP:Forward head posture)の場合、上位頸椎が伸展位、下位頸椎・上位胸椎が屈曲位、第1肋骨は挙上した傾向になり、上位頚椎の屈曲、下位頸椎の伸展、第1肋骨の下制の制限が起こる傾向になります。傾向です、なっているかどうかは確認する必要があります。

顎を引いた時に下位頸椎に疼痛が誘発される場合、上位頚椎の屈曲制限により下位頸椎に過度に伸展して疼痛誘発している、または、上位頚椎は問題ないが下位頸椎の制限により疼痛誘発している、ことがあり、個々の評価が必要になります。

そして、中位頸椎にシワが形成されている場合、中位頸椎でヒンジなるような動作が習慣化されていることが疑われます。臨床で多いのは、上位頚椎優位の伸展動作が先に起こっています。

頚部深層屈筋群の低下が起こると頸椎伸展時の遠心性収縮によるコントロールができなくなり、頸椎伸展時に頭部の中心が肩よりも前に位置する傾向にあります。また、腰椎伸展時に顎を浮かせることがあり、顎を引かせると震えが起きたりもします。これも運動制御の評価をしてダブルチェックします。

頭部前方位姿勢はSlumped sitting / Slouched sitting(胸腰椎後弯位)と同時に観察されることが多いです。

座位姿勢の修正は、頭部位置だけでなくSlumped sitting の修正も考える必要があります。

自動運動テスト・動作分析

頸椎の自動運動は、屈曲、伸展、側屈、回旋で紹介されることが多いですが、前進、後退を含める方が臨床的にはふさわしいです。頭部前方位の修正をすることが多いですからね、自動運動テストは6つです!!

自動運動テストは基本的に口頭指示にて行います。患者に応じて口頭指示を工夫し、必要に応じて徒手誘導を行います。

自動運動テストで屈曲、伸展、側屈、回旋、後退、前進の6つの動きを評価します。

屈曲は側面から観察します。「下を向いてください」と指示し、最終可動域まで評価したければ「顎を胸につけてください」と指示します。多くの方は顎を胸につけれます。2横指以内は正常範囲内として考えます。

なお、顎を引いてから(上位頚椎屈曲)頸椎の屈曲を行うと、頂靭帯の緊張により屈曲が制限されてしまうので注意が必要です。

屈曲位から中間位に戻る動作も同時に評価します。通常、下位頸椎から動き出しますが、顎を上げる動作が先行する場合は上位頚椎優位の伸展動作になっています。

伸展は側面から観察します。口頭にて「上を向いてください」、「天井を見てください」と指示します

通常、下位頸椎から動きだし、最終域では頭部の重心が肩よりも後方に位置していることが望ましいです。

頭部の中心が肩のラインよりも前やライン上に沿っている場合、上位頸椎が優位な伸展動作になっていることが多いです。

疼痛や制限、不安・恐怖によって下位頸椎を動かせない、頸部屈筋群の遠心性収縮による頭部のコントロールができない、などが考えられます。

中間位に戻るときに通常は上位頸椎の屈曲から動きだしますが、胸鎖乳突筋による下位頸椎の前方移動、最後に上位頸椎が屈曲する場合は頸部深層屈筋群の筋力低下が示唆されます。

自動運動テストにて疼痛部位・制限動作・疼痛誘発動作(タイミングも重要)を判断し、症状の原因となっている部位・分節を推測します。

例えば、頸椎伸展と右回旋の制限と右頚部痛がある場合、右椎間関節の下方滑り、最終域の疼痛誘発であれば右第1肋骨の下方への制限が疑われます。この段階では推測ですので、この後の疼痛軽減テストや他動生理的運動テスト、他動副運動テストにて評価します。

自動運動テストは頸椎だけでなく、胸椎も同時に評価します。また、肩関節もスクリーニングし肩の関連などを考慮します。

特定の動作において疼痛が誘発される場合は、動作分析をします。なるべく誘発動作を再現して評価することが重要です。

例えば、車に乗っているときに疼痛が誘発される場合、運転を模倣した姿勢・動作を行います。私はリンドスポーツのハードルを用いて運転動作を模倣してもらっています(普段はハードルで使用しています)。上肢が関わる場合は、運動制御の評価において、頚部と肩甲帯の協調性を評価します。

疼痛軽減テスト

疼痛誘発されたら、疼痛軽減テストを実施し障害部位を判定していきます。

疼痛を軽減する方法は、関節に滑りの力を加える方法、動作を修正する方法、姿勢を修正する方法、筋を促通する方法などが用いられます。

関節に滑りの力を加える方法は、マリガンコンセプトのテクニックです。

参考:Mulligan concept(外部リンク) *日本では日本徒手理学療法学会が定期的に認定コースを開催しています。

例えば、伸展時に頚部痛が誘発される場合、棘突起に対して眼の方向(45°)に滑りの力を加えて疼痛が軽減するか評価します。

理論的には頸椎伸展時は左右の椎間関節は下方滑りが起こります。しかし、棘突起を前上方に押すということは上方滑りを起こしていることになります。

これについては、マリガンは原著にて、腰椎のSNAGのところで「上位レベルの椎間関節が下方に偏位しており伸展によりさらに偏位する、伸展の前に押すことで位置の修正が起こり正しい動きができる(*意訳)」と述べています。

参考

I am often asked for explanation as to why I glide the superior facet up for extension when it biomechanically is supposed to slide down. The theory I hesitantly offer is that the superior facet is ‘Jammed’ down on its partner and extension ‘jams’ it further. Pushing it up before extension takes place repositions it to enable it to now behave biomechanically as it was designed to. I guess the point is they work when indicated and that is all that matters.

Manual Therapy: Nags, Snags, MWMs, etc - 6th Edition より

セラピストによっては、動きを制動することでストレスを減らしていると述べている場合もありますが、これもアリな考えだと思います。

私はシンプルに”関節に滑りの力を加えたら痛みがなくなった、だから、関節が原因の可能性が高い”です。椎間関節かもしれないし、椎体間関節かもしれないし、椎間板かもしれない、どれかはわからないけど”関節”と考えています(椎間関節と椎間板に分けて対応を変えるのも、アリです)。

疼痛軽減要因はマネジメントに活用できる他、患者教育にも有用です。特に即時効果がでる場合は説得力が増します。

「○○することで痛みがなくなりますので、リハビリでは◯◯することが大切になります」といった感じですね。

疼痛軽減テストはセラピストの腕の見せ所です。

初学者の場合、疼痛を軽減させることができないのでアレコレ試します。これは誰もが通る道なので、恐れず通りましょう。職場に熟練のセラピストがいれば、呼んで一緒に確認してもらうと上達が早いです!

複合運動テスト

疼痛誘発動作にもう1つ動作を加えることで、力学的ストレス、障害部位を推測します。

西オーストラリアの理学療法士 Edwards が考えた box diagram は、複合運動テストを理解するためにとても有用です。

例えば、頸椎伸展・右側屈で右頚部痛が誘発される場合、共通点である右椎間関節の下方滑りの制限が疑われます。2つの動作は関節が圧迫される方向になるので、Compression Compression パターンと呼びます。

Stretch Stretch パターン、またイレギュラーなパターンもあり、解釈については細かいので講習会で説明します。

なお、複合運動テストは動作によっては整形外科テストとしても考えられます(例:Spurling's test)。

鑑別テスト

医師の場合は”鑑別診断”と言えますが、セラピストの場合は鑑別テストとした方がいいという判断で、ここでは鑑別テストとしました。

内容は、整形外科 徒手検査法(整形外科テスト)と神経学的テストです。整形外科 徒手検査法は感度・特異度を考慮し、疾患・病態を特定するためのテスト、除外するためのテストを実施します。

例えば、主観的評価で頚部痛と右肩の痛みを訴えており、「右肩の痛みはリーチ動作で痛い、頚部痛が強い時に右肩も痛くなる、肘から先は症状はない」と問診で情報を得ていたとします。

除外目的のテストとして、肩インピンジメント症候群を除外するために Howkins test を実施する、圧迫性神経障害や末梢神経感作を除外するために神経ダイナミックテストや神経学的テストを実施するのが鑑別テストとなります。

鑑別診断は最も可能性が高い診断以外の可能性を強制的に検討します。アンカリング、早期診断閉鎖、確証バイアスといった認知バイアスを軽減させることが目的です。

注意したいのが、疾患・病態の仮説が1つしかでない場合です。初学者に多く、自分が考えた1つの仮説を肯定するための検査をします。そのため、その仮説が間違っていた場合、次の仮説を再度考える必要があります。

エキスパートのセラピストは複数の仮説を立てて、別の仮説を否定するための検査をする作業をしていますので、効率も良い臨床を行っています。

他動生理的運動テスト

分節ごとの椎間関節の関節包内運動を評価します。オーストラリアではPassive Physiological InterVertebral Movements(PPIVM)と呼ばれるそうです。

評価方法には座位・背臥位もありますが、脊椎徒手療法コースでは背臥位での下方滑り、上方滑り、第1肋骨の内下方滑りの3つの評価方法を紹介しています。

分節の評価の前に、まず、他動で頸椎の可動域を確認します。

 

同側の関節の制限がある場合、途中でカチッと止まり、同時に疼痛が誘発されることもあります(*他動運動としての評価)。反対側の肩甲帯が引っ張られてくるようであれば軟部組織の要因を考えます。自動運動と他動運動の差が大きい場合は、分節の制限よりも運動制御の問題のことが多いです。

下方滑りは、椎間関節に示指・中指を置き、側屈させながら関節の組織が厚くなることを指先で感じ取ります。制限がある場合は組織の動きを感じ取れないです。

ただし、この方法はよくわからないという声を受講生から言われます。練習の必要があるのはもちろんですが、もう1つの方法を組み合わせるとわかりやすくなると思います。

もう1つの方法とは、上位レベルの関節柱に指を当て反対側の肩に向かって滑りの力を加え抵抗感を確認する方法です。これはメソッドによっては評価として用いられており、治療手技にもなります。

組織の動きと抵抗感の2つで制限部位を判断することでダブルチェックになります。

分節の動きが低い場合を低可動性(Hypo-mobility)、過度な場合を過可動性(Hyper-mobility)といい、低可動性(Hypo-mobility)の分節に対して関節モビライゼーションを実施します。

軟部組織の評価

軟部組織ついては、僧帽筋、大・小菱形筋、上後鋸筋、頭板状筋、肩甲挙筋などを触診します。

軟部組織の圧痛と関節の圧痛を間違えないように、他動副運動テストの前に軟部組織をスクリーニングする必要があります。

第2-5 肋骨付近は菱形筋と上後鋸筋があるため、筋線維の走行を考慮した評価が必要です。

筋緊張が高く疼痛の要因の1つとなっている場合、軟部組織リリースを介入に含めます。ただし、軟部組織だけの介入では一時的には良くなりますが元に戻ることが多いため、過緊張してしまう主原因に対して介入する必要があるでしょう。

他動副運動テスト

他動副運動テストは、分節の評価に用いられます。頸椎では母指を用いて評価します。

関節の問題かどうかを確定するために用いられますが、メソッドによっては実施しない場合もあります。

私は最初は確定目的で実施していましたが、現在は確定というよりも関節ではないと判断するために用いることが多いです。他動生理的運動テストをした時に、「うーん、制限はなさそうだ、関節押しても問題ないかな、PAしてみよう」という感じです。

棘突起や椎間関節を後方から前方に押すことから、PA(Posterior Anterior pressure)と一般的にいわれます。オーストラリアではPAIVMとも呼ばれ、オーストラリアのPT間では共通言語とのことです(そこら辺にいるオーストラリアのPTに聞いてみないとわかりませんが・・)。

正中PAは棘突起を、片側PAは椎間関節を押して、抵抗感、症状、疼痛の程度を評価します。棘突起を横から押す方法(Transverse PA)もあります。

運動制御の評価

頚部の運動制御障害として、筋活動の変化、不適切な運動パターン、感覚運動制御障害、頚部と肩甲帯の協調性、筋力・筋持久力の低下などがあります。

患者によって運動制御障害は異なりますので、個々の評価が必要になります。

臨床では、他動生理的運動テストの後に、頚部屈筋群の表層筋と深層筋の筋活動を評価することが多いです。背臥位の状態で行える評価は先に済まします。

運動制御については「SMTC5 脊椎モーターコントロールの評価と治療」にて説明します。

頸椎の客観的評価

脊椎徒手療法コースで行っている頸椎の客観的評価について一部ですがフローチャートを用いて説明しました。

主観的評価にて疼痛の過敏性を判断し、高い場合は客観的評価は制限されます。疼痛誘発するのではなく、疼痛軽減を見つけていく場合もあります。

客観的評価の項目・順番は状況・患者に応じて変わります。全ての検査をする場合もあれば、しない場合ももちろんあります。

初回2単位(40分)の客観的評価では10-15分くらいを目処に実施しています。主観的評価10-15分、客観的評価10-15分、治療10分、患者教育5分でしょうか。初回2単位(40分)では、評価を25分で終えるのを目標にしています( 60分という枠組みではまた違った時間配分になりますが・・・)。

初回1単位(20分)であれば、複合運動テスト・他動副運動テストは実施しないことが多いですね。

2単位(40分)の枠組みでは、初回に10項目全てを実施することは難しいことに留意してください。

細かい技術や実際の人を対象にした評価は、講習会にて実技形式で伝えたいと思います。

ここで挙げた項目、フローチャートを参考に自分自身のフローチャートを作り上げてみてください!

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