神経学的検査は、四肢や体幹における感覚・運動障害の部位とその障害レベルを評価するために実施されます。徒手筋力検査、感覚検査、各種の反射検査が含まれます。

深部腱反射は、打鍵器を用いて筋肉の腱を素早く叩き、筋の収縮を評価する検査です。

Warning

病院・クリニックで働く理学療法士は、医師が神経学的テストを実施しているのか、診療録に結果を記載するのかどうか判断する必要があります。神経障害を疑う下肢症状があるにも関わらず、神経学的検査を実施しない医師もいるそうです。神経学的テストが実施されていない、結果が記録されていない場合、理学療法士が必ず評価をする必要があります。

臨床で打腱器を使っていない、リハビリ室にそもそも打腱器がない、あっても学生時代に使っていた打腱器・・・といったことも見聞きします。実施しなくなると検査技術はさびれていきますので注意が必要です。

メカニズム

腱反射は筋の伸張反射に由来する反射で、腱を叩打し誘発します。

筋肉の腱が叩かれることで、筋が素早く伸張し、その刺激が骨格筋の中にある筋紡錘に伝わり、求心性神経(Iα線維)を介して脊髄前角細胞に情報が伝わり、そして、直接、遠心性神経(α運動線維)に伝わって筋が収縮します。 

腱にはそれぞれ反射弓と呼ばれる神経伝達経路があり、セラピストは腱ごとの反射弓を覚える必要があります。

腱反射の解釈

腱反射は、左右差の、消失、亢進を判断することが大切です。

腱反射の左右差がある場合、障害が片側であることが示唆されます。

腱反射の減弱・消失は、反射弓の障害を意味します。感覚障害を伴っている場合は求心性神経と脊髄後角の異常、麻痺を伴っている場合は遠心性神経と脊髄前角の異常が示唆されます。

例えば、 頸椎椎間板ヘルニアでC7神経根が圧迫されると、上腕三頭筋の腱反射の減弱および筋力低下、中指の感覚低下が起こります。

腱反射の亢進は、亢進している反射弓より上の錐体路障害を示唆します。例えば、頸髄症性脊髄症の場合、障害高位での深部腱反射は低下し、障害高位以下での腱反射は亢進します。また、病的反射の出現やmyelopathy hand などが兆候としてあります。

腱反射の感度・特異度は実施者のスキルや疾患ごとに異なるため、腱反射の結果だけで疾患を判断しない、他の神経学的所見(筋力、感覚)や画像所見などを組み合わせて障害部位や疾患を解釈することが大切です。

 

打鍵器の種類

打腱器はさまざまな種類があり、種類によって「反射がでやすい、でにくい」ことがあります。

実施者のスキル以外にも、道具が関わってくるんですよね。

よく推奨される打腱器は、クィーンスクエア(円盤タイプ)、バビンスキー(円盤タイプ)、テーラー(三角形タイプ)といったものがあります。医師は、円盤タイプの打腱器を使用している方が多い印象です。

  

 

オーストラリア留学時、使用していたのは円盤タイプのものでした。ちなみに、テーラー式に似ていますが、ハンマーの先が丸く、持ち手の先に毛と針がついている打鍵器はまったくといって使えないです。

誘発のコツ

  • 筋がリラックスしていることを確認
  • 伸張と短縮の中間肢位
  • スナップを効かせる、素早く叩く

誘発 elicit が難しい場合は、歯を噛みしめるか、両手をつかんで引っ張るといったことを行います(Jandrassik maneuver)。下肢を検査している時は両手をsqueeze し、上肢を検査している時は歯を噛みしめます。

記載方法

腱反射の記録方法には国際的に統一されたものがないそうです。なので、各施設で決めておくと意思疏通が図れると思います。

<参考:Fundamentals of the physical therapy examination>

  • 0:No reflex
  • 1+ :Minimal or depressed response
  • 2+ :Normal response
  • 3+ :Overly brisk response
  • 4+ :Extremely brisk response with clonus, which is an involuntary repetitive back and forth motion

<参考:難波 2018>

  • N :正常 
  • ↑ :正常範囲だが活発 
  • ↑↑: 亢進
  • ↓ :低下
  • φ:消失