英語名

Anterior Scalene

説明

斜角筋の一部、頸部前面、胸鎖乳突筋の深部に存在する筋。

起始・停止

第3~6頸椎の横突起前結節から起こり、下方に向かい、細い扁平な腱となって第1肋骨の斜角筋結節に付く。

支配神経

頸神経(C5-7)

作用

斜角筋の作用は、骨の付着部の固定状態による。頸椎が固定されていると、斜角筋は呼吸における吸気を補助するために肋骨を引き上げる。反対に、第1、2肋骨が固定されていると斜角筋の収縮は頸椎を動かす。前斜角筋は頸椎の側屈が主、また、屈曲に作用する。回旋については、書籍によって変わる。

  • 頸椎側屈
    前斜角筋は、胸鎖乳突筋の頭部線維に次いで、側屈作用においてす べての斜角筋のなかで最も大きなモーメントアームを有する。
  • 頸椎屈曲
    前斜角筋が両側に収縮すると、頸椎を屈曲させるのに小 さなモーメントアームをもつ。
  • 頸椎回旋
    文献・書籍によって異なる。回旋について書かれていない場合もあるが、キネシオロジーでは同側回旋と書かれている。
臨床との関連

前斜筋と中斜角筋の間の斜角筋間隙は、 鎖骨下動脈と腕神経叢が通る。胸郭出口症候群(斜角筋症候群)における圧迫部位となる。 鎖骨下静脈はここを通らずに前斜角筋の前を通る。

斜角筋が関与する胸郭出口症候群のテストには、Adson テスト、Allen テストなどがある。

胸式呼吸が優位になっている場合、呼吸補助筋として活動するとことで斜角筋が過緊張していることがある。斜角筋が過緊張に対して、マッサージ・ストレッチは介入として不十分なことが多く、呼吸パターンの改善が重要となるだろう。

頸部深層屈筋のエクササイズでは、斜角筋および胸鎖乳突筋の過活動に注意が必要となる。

参考文献・書籍

医学書院 医学大辞典 第2版
竹林 2019_頸椎前方の筋肉の解剖と機能
Neumann DA 2018_筋骨格系のキネシオロジー3e.
ジョセフ・E・マスコリーノ 2017_筋骨格系の触診マニュアル 第2版
青木・林 2012_運動療法のための機能解剖学的触診技術(下肢・体幹)改訂第2版