臨床において、徒手療法やエクササイズだけでは改善が難しいケースに出会うことが多々あります。 

 

そういった場面で、インソールの有効性を実感するケースが多々あります。

 

本記事では、インソール作製を始めたきっかけから、整形外科クリニックにどのように導入し、今どのように活用しているかをまとめています。

 

インソールとの出会い

 

インソール作製を始めたのは2016年、気づけば、もう10年目を迎えました。

  

これまでに作ったインソールの数は正確には数えていませんが、おそらく1,000足以上は作製してきたと思います。インソール作製を専門的にされている先生方に比べたら全然ですが、だいたい週に2足のペースで年間に約100足作製して、あしかけ10年です。

 

初めて理学療法士のインソール作製に出会ったのは、20年近く前の話、病院での臨床実習のことでした。

 

当時のバイザーである相谷先生(現:あいたにインソールとからだの研究所)が「入谷式足底板」を作製されており、相谷先生の臨床の取り組み、熱心さ、また、インソールの効果、奥深さを目の当たりにしました。

 

足からアプローチする治療効果を実感したのは、このときが初めてでした。

 

実は実習中にインソールを1足、作らせてもらったのですが、当時の自分には理解が足りず、今も残っているそのインソールを見ると、正直かなり恥ずかしい出来です。

 

 

インソールを臨床で作製しようと思った理由

 

臨床実習でインソールの有用性を知ったわけですが、臨床にでてからはしばらくインソールを作製していませんでした。 

 

しかし、とある患者さんとの出会いから、臨床でインソールを作製しようと強く思うようになりました。

その患者さんは、人工股関節術後、脚長差があり、主訴が腰痛の患者さんです。

  

当時の自分の知識・技術を駆使して、徒手療法やら、エクササイズやら、いろいろ試したのですが、腰痛は一向に良くならず。

  

「脚長差が原因では?」

 

と思い返し、義肢装具士さんにお願いして補高したインソールを作製してもらいました。

 

そして、インソールをしばらく履くと、腰痛が改善しました。

 

徒手療法やエクササイズでは効果がなかったのに、インソールで改善したという経験は、自分にとって非常に大きな衝撃でした。

  

ただし、インソール作製までの事務的な手間や制限、作製後に調整できないジレンマがあり

 

「これは、自分自身でインソールを臨床に取り入れるしかない」

 

と、決意しました。

   

どのインソールメソッドを選ぶか?

 

インソールを臨床に取り入れるにあたって、どのメソッドが自分に合っているのかを考えました。

 

入谷式足底板の凄さは十分に理解していましたが、正直なところ「自分には難しすぎる」と感じていました。

 

そんな中で出会ったのが、「特定非営利活動法人オーソティックスソサエティー(旧DYMOCO)」でした。

 

この団体は、もともと入谷式と同じルーツを持つものの、その後、分派して独自の道を歩んできました。

 

私が2016年に初めて受講した当時は「DYMOCO」という名称でしたが、その後の組織内の変化……というか内部分裂を経て、今の「オーソティックスソサエティー」となり、トレーナーの呼称も「フットケアトレーナー」から「フットコントロールトレーナー」へと変更されました。

 

オーソティックスソサエティーの特徴はというと(*私見)、

  • 足と靴のフィッティングを重視
    足のサイズを計測し、靴が合っていなければ、靴の変更を提案することもあります。靴が合っていないと、インソールの効果が半減するためです。
  • 履く靴に合わせたインソール作製:靴によって形状や性能は変わります。靴に合わせてインソールの材料を工夫し作製します。
  • 動作分析に基づいた作製
    型取りではなく、歩行や動作を評価しながら作製します(これは入谷式と共通)。
  • 作製のしやすさ
    あらかじめ形成されている複数のパーツ(ヒールウェッジ、3軸パッドなど)を用いるため、作製がしやすく、時間効率も良いです。40分以内での作製も可能です。
  • 段階的な作製が可能
    必要に応じて、2回に分けて段階的に作製することも可能です。
  • 靴に入っている中敷きをベースに作製可能
    私は「セミオーダー」「フルオーダー」に分けて提供しています(詳細はこちら)。
  • 削らないインソールも作製可能
    さまざまなパーツがあるので、削らないインソールも作製可能です。ただし、グラインダーがあった方が細かい調整が可能です。

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といった特徴があるのかな、と思っています。

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諸々の理由から、オーソティックソサエティーを自分のインソール作製のベースにしようと思い至りました(入谷式のメソッドは隠し味として……)。

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そして、2016年からC・B・Aと順にコースを受講していき、都度ライセンス料を払い、インソールの作製を始めました。

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(ライセンス制度そのものはすごく良いと思うんですが、登録料の値段には賛否あります。素晴らしいメソッドなのに、広まりにくいのは、ちょっともったいないなと感じています。Bまで受けないと何もわからないのになぁ…)

ㅤインソール作製の初期は、知識・技術が圧倒的に足りておらず、失敗も数多く経験しました…。失敗は、インソールの出来とかだけではなく、自由診療ならではの失敗も多くありました。

  

職場に教えてくれる先輩もいなかったので、当時あった永田町での施設研修や、テーマ別のセミナーに足を運んで学んだりして、研鑽を積んでいき、自分の型を作りあげていきました。

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そして、10年が経ち、下肢疾患に対するインソール作製としては、ある程度の結果がだせるようになってきました。

 

整形外科クリニックでの導入のポイント

 

臨床でインソールを導入する際、最初にぶつかる壁は「理学療法士がインソール作製をどう整形外科クリニックに導入するか?」という点です。

 

整形外科クリニックは義肢装具士さんとの付き合いがありますからね。 

   

理学療法士が作製するインソールは、基本的に自由診療です。

そのため、

  • 料金設定
  • 売上の分配方法
  • 管理体制(トラブル対応、備品の管理など)
  • 作業環境(グラインダーの設置場所や音問題)

など、多くの調整が必要です。

 

私の場合は、整形外科クリニックとの契約時に、インソール導入についてあらかじめ話し合いを行いました。

 

結果として、

  • インソールは個人事業主として対応
  • 全ての物品管理・購入、トラブル対応も自己責任
  • 売上も全額個人事業主に帰属(これはかなり異例)

という形で運用することになりました。

  

私一人で再スタートした整形外科クリニックのリハビリテーション科だったため、導入のハードルは比較的低かったのですが、もともとインソールを扱っていない施設では、導入までの調整はかなり大変だと思います。

 

新しいことを始める時、賛成する人もいれば、反対する人もいます。プレゼン資料を用意して、事前の根回しが大切です。

 

売上分配をどうするかは、クリニック側としっかり話し合った方がいいです。例として、自由診療で勤務時間外の作製、インソール費用から作製費を引いて40-60%を支給、売上または作製数に応じて%を引き上げる・・・でしょうか、この場合はプラス残業代も含めて、一件あたり5〜6,000円になるようにしたいです。専門の知識・技術に見合った報酬を、理学療法士の副収入を増やしてあげて欲しいですね。

 

臨床でインソールを作製して良かったこと

 

インソールを整形外科クリニックに取り入れたことで、臨床の幅が大きく広がりました。

 

関節の変形が強く、なかなか改善が見られなかった患者さんにも、インソールを用いたアプローチが有効であることが増え、治療の選択肢が広がった実感があります。

インソール作製を目的とした来院もかなり増え、クリニックの来院患者数の増加にも貢献していると思います。

 

また、私の印象ですが、活躍されている臨床家の多くが、インソールを臨床に取り入れられているように思います。

  

インソールを扱えるようになるには、技術や経験が求められますが、その分だけ患者さんへの貢献度も高く、自分の臨床スキルや視野も広がると感じています。

  

これからインソールを学びたい、これから整形外科クリニックにインソールを導入したいと考えている理学療法士の方の参考になれば幸いです。

 

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