「腰痛診療ガイドライン2019」によると、腰痛を部位、有症期間、原因別に定義しています。

 

部位では「体幹後面に存在し、第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み、片側または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」としています。この範囲には、腰椎・仙腸関節・股関節の3部位があり、どの部位が腰痛の原因になっているか判断する必要があります。

 

腰痛は有症期間に応じて急性腰痛(4週未満)、慢性腰痛(3ヶ月以上)分けられますが、組織損傷の程度から痛みが想定されるものを急性腰痛、想定できない程の痛みを訴える場合を慢性腰痛と捉えることもあります。 

 

原因別には、重篤な基礎疾患(悪性腫瘍、感染、骨折など)、下肢の神経症状を併発する疾患、各種脊柱構成体の退行性病変とあります。

  

 

腰椎の退行性変化は、Dysfunction(機能不全)、Instability (不安定性)、Stabilization(安定化)と進行していきます。

 

腰痛を何度も繰り返している場合、不安定性の可能性が高くなります。

 

最終ステージの腰部脊柱管狭窄症(LCS)は、動かない、固まっているだけでなく、不安定性も存在すること多いです。LCS の手術歴がある場合、術式を確認した上で過去の身体機能を予測します。固定術を行っている場合、過去に不安定性があったことを示します。

 

骨盤・腰椎のアライメントはどうだったのか、体幹機能はどうだったのか、手術以外の介入は何かしたのか、仮説を立てることで問診もスムーズになります。

 

 

Loseser が提唱した痛みの階層モデルは、一番内側から順に「侵害受容」「痛み」「苦悩」「痛み行動」となっています。

 

侵害刺激を神経が受容した「侵害受容」、過去の経験や情動が加わり「痛み」として認知し、その痛みが身体的・精神的な「苦悩」に発展し、言葉や表情、身体をさする、薬を飲むなどの「痛み行動」となります。

 

急性期では内側の円が中心で、慢性期になると外側の円が大きくなります。急性期の場合、「痛み」を感じて薬を飲むという行動は正しいと思います。一方、組織が治癒しているにも関わらず「痛み」がある、いわゆる慢性疼痛で、かつ不安や恐怖を感じる、痛みをよく訴えるといった場合、「痛み行動」が問題となってきます。

 

 

 

「痛みの恐怖モデル」は、痛みの悪循環を示しており、慢性疼痛の患者でよくみられます。

 

受傷によって痛みを体験すると、恐怖がない場合は痛みと対峙して回復へと向かっていきます(図右)。

 

しかし、痛みを体験後に、「痛みについて破局的思考」が生じてしまうと、負のサイクルに入ってしまいます。破局的思考とは、痛み体験を過度にネガティブに捉えてしまう思考です。わかりやすく言うと、痛みを気にする、痛みが頭から離れられない、痛みに対してダメだと思ってしまう状態です。

 

「痛みの破局的思考」が生じると、「痛みに対する不安や恐怖」が助長され、過度な疼痛回避行動を起こすことで身体活動を制限し、二次的な機能障害や抑うつなどを引き起こして痛みの増悪や新たな痛みを感じる・・・といった悪循環に入ってしまいます。

 

破局的思考は、医師や理学療法士が不用意に発したネガティブなアドバイスから引き起こされることもあるので注意が必要です。

 

例として、変性しているので治らない、椎間板が減っている、などがあります。患者が安心する伝え方、ポジティブなアドバイスが医療者には求められます。

 

急性腰痛の臨床経過は、短期間では改善を示すが慢性化・再発しやすいため、理学療法士は「慢性化を防ぐ」「再発を予防する」マネジメントが求められます。

  

慢性化の要因の1つに「心理社会的要因」があります。例えば、過度な不安、恐怖、怒り、抑うつ、ストレス、破局的思考といった要因がある場合、自己記入式質問用紙などを用いて早期に発見し介入を工夫することが必要となります。

 

他にも慢性化のリスク因子には、喫煙、肥満、飲酒、運動習慣などがあります。介入が可能なリスク因子については、検討していきます。

 

私は、非特異的腰痛の患者に対しては「ほとんどの腰痛は1ヶ月で良くなりますので、普段通りの生活をしてください。」と伝えるようにしています。

 

 

「腰痛診療ガイドライン2019」に、腰痛の診断手順があります。このフローチャートは理学療法士にも参考になります。

 

腰痛患者を担当したらまず危険な信号(レッドフラッグ)を確認し、重篤な基礎疾患を除外します。

 

レッドフラッグが複数あれば、診察を促します。

 

レッドフラッグを除外したら、問診の中で「お尻より下に何か症状はありますか?」と確認し、下肢症状のあり、なしを判断します。神経症状ありの場合は、必要に応じて、診察を促します。

 

神経障害がない場合、必要に応じて心理社会的要因のスクリーニングを問診または自己記入式質問用紙にて行います。

 

4〜6週間、保存的治療を行い、改善ありの場合、患者教育また自己管理の方法を指導していきます。痛みがなくなったら終わりではなく、再発予防を含めたマネジメントを行なっていきます。 

 

まとめ

整形外科クリニックにおいて「腰痛」は最も多い疾患の1つです。

   

腰痛は慢性化・再発しやすい疾患です。

 

急性腰痛のリハビリテーションのゴールは症状の改善はもちろん、慢性化・再発を防ぐためのマネジメントが必要になると思います。

   

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