神経障害を疑うような上肢・下肢の症状がある場合は、神経学的テストが行われます。

神経学的テストには、Myotome test、感覚テスト、そして、深部腱反射(DTRs: Deep tendon reflexs)があります。

 

深部腱反射の減弱・消失は、反射弓の障害を意味します。例えば、腰部椎間板ヘルニアでL4神経根が圧迫されることで、膝蓋腱反射が減弱します。一方、深部腱反射の亢進は、脊髄・脳の中枢神経の障害を疑います。上位ニューロンの障害があると腱反射は亢進、場合によってはクローヌスが起こります。亢進が認められたら、病的反射を確認!です。

神経根障害において同じレベルの神経根が左右ともに障害されることは稀であるため、片側だけの反射の低下がみられることが多いです。ただし、多くの筋は1つ以上の神経根から供給されているため、1つの神経根が障害されても反射がでる可能性があるそうです。例えば、大腿四頭筋はL2, L3, L4 の神経根から供給されているため、L4神経根の障害があっても、L2, L3 があるため反射がでる可能性がある(参考書籍 Fruth SJ より)・・・とのことです。大事なのは、左右を比較する、腱反射の結果だけで判断しない、ということですね。

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深部腱反射は筋の伸張反射に由来する反射で、腱を叩打し誘発します。腱が叩かれ筋が素早くストレッチされると、刺激が骨格筋の中にある受容器の筋紡錘に伝わり、Ia線維を介して脊髄前角細胞に情報が伝わり、次にα運動神経に伝わって筋が収縮します。腱にはそれぞれ反射弓があり、腱と反射弓を覚える必要があります(例:膝蓋腱 L3-L4)。反射弓とは、反射の神経伝達経路のことで、末梢感覚受容器からの求心性神経、1つ以上のシナプスを含む中枢内経路、そして効果器に至る遠心性経路からなります(医学大辞典第2版、医学大辞典)。

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難波(2018)は、「腱反射の解釈には、左右差、消失、亢進、の3点が重要である。腱反射の低下・消失と神経分節に応じた感覚障害は求心性神経と神経節・脊髄後角の異常を示唆、麻痺・筋萎縮・線維束性筋攣縮と伴った腱反射の消失・低下は遠心性神経と脊髄前角細胞の病変を示唆」と述べています。

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腱反射の感度・特異度は実施者のスキルや疾患ごとに異なるため、腱反射の結果だけで疾患を判断しない、他の神経学的所見(筋力、感覚)や画像所見などを組み合わせて障害部位や疾患を推定することが大事です。

 

打腱器(打診器)の種類

打腱器はさまざまな種類があり、種類によって反射がでやすい、でにくいものがあります。実施者のスキル以外にも、道具が関わってきます!よく推奨される打腱器はスナップが利くもので、クィーンスクエア(円盤タイプ)、バビンスキー(円盤タイプ)、テーラー(三角形タイプ)といったものがあります。医師は、クィーンスクエア、バビンスキーの打腱器を使用している方が多い印象です。

  

私は、クィーンスクエア、バビンスキー、テーラーを、比較・検討した結果、クィーンスクエア、バビンスキーの打腱器を使用しています。テーラーは安くて持ち運びやすいのですが、少し軽いです。ちなみに、私が学生時代に使っていたもの(テーラー式に似ていますが、ハンマーの先が丸く、持ち手の先に毛と針がついている)はまったくといって使えないです。ある文献で名指しでこの打腱器は”決して使用すべきではない”と述べているものがありました。

 

この打腱器で反射がでなくても、円盤タイプのクィーンスクエアやバビンスキーで行うと反射がでます・・・ので、反射がでづらい打腱器を使用して消失と思ったものが、実際は正常だった場合、誤った解釈をしてしまう可能性がありますね。。

 

腱反射の方法

対象となる筋がリラックスしていることを確認し、筋がストレッチした肢位にて、数回、腱を叩打します。強く叩くのではなく、素早く叩くのがコツです。打腱器はしっかり握るのではなく、リラックスして握り、手のスナップを効かせます。 

誘発 elicit が難しい場合は、歯を噛みしめるか、両手をつかんで引っ張るといったことを行います(Jandrassik maneuver)。下肢を検査している時は両手をsqueeze し、上肢を検査している時は歯を噛みしめます。

三角形タイプの打鍵器(テーラー)を用いる場合、広い方は腱を叩く時に用いて、尖っている方は自分の指を叩く時に使用する(Stacie JF)・・・という紹介もありますが、後の動画を見るとテーラー式でも膝蓋腱を尖った方で叩いていたり、指を広い方で叩いたりしています。

膝蓋腱:L3-L4

肢位:座位(膝屈曲90°)、背臥位(膝屈曲30°)

叩打:膝蓋腱

正常反応:膝の伸展

Manual Concept (オーストラリア)では側臥位の方法を習いましたが、左右左が見づらいという欠点があります。背臥位の方法もありますが、背臥位で誘発できなくても座位で誘発できることもよくあります。膝関節角度による筋の伸張度の違いなどが関係していると思います。

内側ハムストリングス:L5 -(S1)

肢位:腹臥位、側臥位、背臥位

叩打:半膜様筋腱

正常反応:膝の屈曲・筋の収縮

膝の屈曲とありますが、膝が屈曲しない方も多く筋の収縮で確認することも多いです。ちなみに、外側ハムストリングス の腱反射もあり、反射弓 はS1-(S2)です。ただし、S1に関して私はアキレス腱反射で確認しています。

アキレス腱:S1 - (S2)

肢位:膝立位、腹臥位、背臥位

叩打:アキレス腱

正常反応:足の底屈

比較的、どの肢位でも誘発しやすいですが、膝立位がよく紹介されています。アキレス腱反射は70歳を過ぎるとほぼ確実に低下する(難波2018)ので、アキレス腱反射が亢進していない=脊髄の病変ではない、とは言い切れないことに注意が必要です。

 

You tube 動画で深部腱反射を確認

腱反射テストは、文献・書籍によって微妙に違います。英語版の方が圧倒的に数が多いので、英語の動画を確認してみましょう。

 

3分42秒から下肢が始まります。座位の膝蓋腱反射、座位と背臥位のアキレス腱反射を紹介しています。

  

背臥位の膝蓋腱反射とアキレス腱反射を紹介しています。

  

3分35秒から下肢が始まります。座位での膝蓋腱反射、アキレス腱反射を紹介しています。この動画では、膝蓋腱の位置を確認してから叩くように、膝蓋骨を叩かないように、と言っています。これはあるあるですね。

  

腹臥位で内側・外側ハムストリングスの腱反射を紹介しています・・・が、指を置いてテーラー式の打腱器の広い方で指を叩いており、また、置いている指の位置も下腿近位部です。私は大腿遠位で習ったのですが、下腿近位部もありなのか??

 

腱反射の記録

腱反射の記録方法には国際的に統一されたものがないそうです。なので、各施設で決めておくと意思疏通が図れると思います。書籍・文献で紹介されていた方法をまとめました。5段階がわかりやすいかなぁ。

 

末廣 2012

  1. - 消失:全く腱反射が出現しない
  2. ± 減弱:腱反射は出現するが、程度は減弱である、基本的には出現、時に出現しない
  3. + 正常:腱反射の程度は正常域である
  4. ++ 軽度亢進:腱反射は亢進、筋腱移行部での叩打刺激による反射は亢進しない
  5. +++ 中等度亢進:腱反射だけでなく筋腱移行部での反射も亢進、筋腹中央部では亢進しない
  6. ++++ 高度亢進:腱反射、筋腱移行部、筋腹中央部での反射が全て亢進、クローヌスが出現することもあり、病的である

Fundamentals of the physical therapy examination

  • 0 No reflex
  • 1+ Minimal or depressed response
  • 2+ Normal response
  • 3+ Overly brisk response
  • 4+ Extremely brisk response with clonus, which is an involuntary repetitive back and forth motion

難波 2018

  • N 正常 
  • ↑  正常範囲だが活発 
  • ↑↑ 亢進
  • ↓ 低下
  • φ  消失

他にも、消失〜クローヌスを伴う亢進を0〜5で表現する方法もあると述べられています。

下肢の深部腱反射のまとめ

神経学的テストには、Myotome test、感覚テスト、そして、深部腱反射(DTRs: Deep tendon reflexs)があります。打腱器(打診器)の種類、実施方法、記録方法、いろいろあります。動画をみてもいろいろな方法がありますね。

 

正確に誘発できるようにためには、腱反射を誘発しやすい打腱器を用いる、強く叩くのではなく素早く叩く、打腱器はリラックスして握って手のスナップを効かせる、ことが大事です。

 

また、繰り返しになりますが、腱反射の感度・特異度は実施者のスキルや疾患ごとに異なるた、腱反射の結果だけで疾患を判断しない、他の神経学的所見(筋力、感覚)や画像所見などを組み合わせて障害部位や疾患を推定することが重要です。

 

Myotome test について知りたい方は、コチラをご覧ください。

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整形外科クリニックで働くセラピストは、神経学的テストを行なっている医師かどうか判断する必要があります。

神経障害を疑う下肢症状があるにも関わらず、神経学的検査を実施しない医師もいます。ひどい場合は整形外科テストも実施せず、問診とX線画像だけで診断する医師もいます。問診とX線画像だけで腰部椎間板ヘルニアと診断、リハビリオーダー、初回リハで理学療法士がリハビリ室に入る歩行で足部の下垂足(drop foot)にすぐに気づき、再診察を促し装具作成に至ったケースもあるそうす。神経学的テストの結果が記録されていない、実施していない場合はセラピストが必ず評価をする必要があります。

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参考書籍

参考文献

  • 末廣 2012:深部腱反射検査における検査のポイント, 関西理学 12:25-27
  • 上田 2016:本当に頸椎症ですか? 頸椎症性脊髄症の診断とピットフォール, 総合診療, vol.26 no.11
  • 山田・志波 2016:神経学的検査, 関節外科 Vol.35 10月増刊号
  • 難波 2018:画像を撮らず障害部位を見つける!! 腱反射のテクニック, medicina Vol.55 No.9

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